【スタートアップの成長戦略】リスクから考える投資契約の意義と重要性

AIやIoTの台頭といった第4次産業革命が発展しつつある昨今、さらなる経済成長のためには、ベンチャー企業による迅速かつ大胆な挑戦が不可欠と言われています。しかし、起業家や既存の企業、大学、金融機関、公的機関などの結びつきによってベンチャーが誕生し、それがすぐれた人材や技術、資金を呼び込み発展するという「ベンチャー・エコシステム」が機能している米国とは異なり、日本ではそのようなシステムはまだ十分に構築されたとはいえない状況です。

そのため、近年ではベンチャー企業の創出を後押しすべく国も動き始めています。ここでは、ベンチャー企業やスタートアップに欠かせない資金調達時に検討が必要となる投資契約の
意義と重要性について解説します。

 

投資契約の重要性が高まっている背景とそれぞれで起こりうるリスクとは

①複数回にわたる追加投資の増加

企業の成長ステージは、シード期(創業前)・アーリー期(創業~事業が軌道に乗るまでの時期)・ミドル期(事業を本格的に進める時期)・レイター期(事業が黒字化し事業拡大や新規製品開発を進める時期)の4つにおおむね分類されます。

ベンチャー企業は事業の運転資金を確保すべく、シード期から投資を受けることが多い傾向にあります。この段階では、エンジェルなど個人投資家による出資が多いのですが、投資家にとって高いリスクを伴うため、投資金額は数百万円程度にとどまることが多いとされております。

アーリー期からIPO間近のレイター期にかけて会社が成長してくると、成長スピードを上げたり事業を拡大するために追加投資を受けることが必要になります。そうなると、投資ラウンドごとにさまざまな目論見や方針・戦略を持った投資家が集まるので、ベンチャー企業と投資家、また投資家同士で事業展開の方針において不一致が生じることもあります。

②投資ストラクチャーの複雑化

1990年代から2000年代初頭にかけて、米国市場でインターネット・バブル(ITバブル)が起こり、当時米国で流行っていた投資手法である優先株式の発行が行われていました。しかし、優先株式の運用の複雑さから、ITバブル期以降は普通株式の利用が一般的になります。その後、商法改正や会社法の施行により株式の設計が一定程度自由にできるようになったことや、Exitの手段としてM&Aが利用されるようになってきたことから、種類株式や新株予約権などを発行するケースも増えてきました。

しかし、種類株式を発行するのは投資家のリスクヘッジが目的なので、投資家にとって有利となる規定が盛り込まれます。投資家の利益を強調するあまり複雑な設計になりすぎると、その後の運用が煩雑となったり不明瞭になることもあるのですが、いずれにしろ、投資契約を交わす際には条件面について発行会社や既存株主などと綿密な調整を行うことになります。

③投資家層の多様化

ベンチャー企業に関わる投資家は、シード期にはエンジェルがメインとなるでしょう(ただし、VCの色によってはシード期の投資を積極的に行うところもあります)。しかし、アーリー期以降、ステージが変化してくるとVCやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などからも投資を受けるシーンが増えてきます。しかし、エンジェル・VC・CVCでは、投資目的がそれぞれ異なることがあります。

エンジェルの投資目的は主に起業家への応援の意味合いが強いのに対し、VCはキャピタルゲインを得てファンドに投資してくれた投資家に還元することを目的としています。またCVCは投資先のベンチャー企業の保有する技術やアイディアとの事業シナジーを起こすことを主な目的としています。このように、投資目的や方針がそれぞれに異なると、投資者間で利害が対立することもあります。そこで、お互いの投資目的や方針を明確に認識した上で、ベンチャー企業は各々の対応をする必要があります、

④Exit形態としてのM&Aの増加

従来、投資家がExitを行う手段はIPOがメインでした。IPOが前提となっていた時代には、投資契約では上場前に種類株式を普通株式に転換し、投資契約の効力を失わせることが普通でした。しかし、昨今では中小企業のM&Aが盛んにおこなわれるようになり、非上場のうちにM&Aが発生するケースも珍しくありません。

そうなると、IPOを前提にした投資契約では足りず、投資家や発行会社だけでなく、従業員株主やエンジェルなど利害関係者をすべて巻き込んだM&Aを想定した意思決定プロセスや売却代金の分配方法などを加味して定めを置いた投資契約が必要になるのです。

なぜ投資契約が重要なのか?

想定外の未然防止のため

エンジェルは、ベンチャー企業の成長を期待して資金を提供するものです。そのため、提供した資金を想定外のことに使わないよう、事前にある程度の約束をしてもらうことが必要になります。またVCの場合は、ベンチャー企業に投資する資金は投資家が自分のファンドに提供してくれたものです。投資してくれた投資家に対しての説明責任を果たすためにも、VCは投資先の企業の状況を常に把握し、想定外の事態を未然に防止する責務があるといえるでしょう。

ベンチャー企業や創業株主、投資家との利害調整

ベンチャー企業が成長するにつれ、そのベンチャー企業に関わる株主や投資家も増え、企業・創業株主と、投資家との間で利害を調整する必要が生じてきます。株式発行に関する事項や経営に関する事項をあらかじめ利害関係者に情報開示し協議の機会を十分にとることで、その後の関係をスムーズにすることができるのです。そのために、投資契約においては、そのような情報開示の規定が盛り込まれます。

また、それぞれの投資家ごとに異なる投資契約を結んでいると、契約内容に齟齬が生じ、運用が煩雑化したり、時に特定の投資家との間で契約違反が起こる可能性も否定できません。たとえばエンジェルAとの間で結んだ契約内容を忠実に履行すれば、エンジェルBとの間で契約違反となり、トラブルが生じることも考えられます。契約違反起こさないためにも、それぞれの投資家と統一した投資契約を結ぶ必要性があるのです。

AI-CONで投資契約のリーガルリスクを回避

AI-CONでは、投資契約のリーガルチェックにも対応しています。投資家はお金を出す立場・ベンチャー企業はお金をもらう立場という違いから、ベンチャー企業にとって無理難題な規定が盛り込まれていることもありえます。AI-CONで内容をチェックし、問題のある箇所については削除や修正を求めていく姿勢も大切です。また、AI-CONドラフトでは投資契約の雛形もご用意していますので、ぜひご活用ください。

 

 

【参考文献】
経済産業省「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」

http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180402006/20180402006-1.pdf

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