【ベンチャー経営者必見!】投資契約・株主間契約・財産分配契約の概要

起業家が事業展開をしようとするとき、必要になるのが資金調達です。資金調達の仕方は銀行から融資を受ける、補助金や助成金を申請するなどがありますが、投資家から投資をしてもらうのもひとつの方法です。そこで今回は投資を受けるときに結ぶべき契約について解説します。

 

投資を受けたいときに結ぶべき3種類の投資契約

エンジェルやベンチャー・キャピタル(以下「VC」)から投資を受けるときに結ぶことになるのが、投資契約・株主間契約・財産分配契約の3つです。

 

投資契約

投資契約とは

投資契約とは、投資家が株式を取得するときの投資条件を中心に定めたものです。会社法上、投資契約を結ぶことは必須ではなく、エンジェルから投資を受ける場合は契約を締結しないこともよく見受けられます。しかし、投資家がベンチャー企業に資金提供を行うのは、将来の成長を期待するためでもありますが、高いリターンを得るためでもあります。

そのため、投資先が想定外のことをしないよう、事前にある程度のことを決めておく必要があるのです。

投資契約の主な内容

・株式の募集内容(株式の種類、内容、数、株価、払込期日など)が中心。

・投資を受けるにあたって会社が表明し保証した内容。

・投資後に関する内容(事前承認・通知事項、取締役指名権、オブザベーションライト・情報公開に関する事項など、会社経営に関する事項)

 

株主間契約

株主間契約とは

株主間契約とは、投資後の会社の運営やモニタリング、株主間の利害調整に関わる条件を定めたものです。はじめのうちは個々の投資家と投資契約を結ぶだけで事足りることが多いものの、成長するにつれて異なる投資家から投資を受けることも増えてきます。そのようなときに個々の投資家と契約を結んでいると、投資家ごとに異なる権利義務関係が発生し、足並みが揃わなくなります。

株主間契約の主な内容

・会社経営に関する事項(事前承認・通知事項、取締役指名権、オブザベーションライト)

・情報公開に関する事項

・投資家のExitに関する事項

 

財産分配契約

財産分配契約とは、株主間契約の「みなし清算条項」や同時売却請求権といったM&Aを用いたExitに関する規定を中心に抜き出して作成する契約です(ただし、これらは株主間契約で定められることもあります)。

M&Aの際の株主間の分配方針について規定するもので、種類株式に優先分配の規定が置かれている場合に利用されます。優先分配を有効に機能させるため、投資契約や株主間契約に参加していないエンジェルや従業員株主も含め、すべての株主が参加することが必要です。

みなし清算条項とは

M&Aが生じたときに、会社を清算したものとみなして投資家に対して優先的な分配を行うことを規定したものです。ベンチャー企業の買収では、一般的に株式の譲渡が用いられることが多いですが、株式の譲渡があっても、会社自体は清算されずに残るため、優先権を設定した投資家の残余財産分配請求権が会社法上発動しないことになります(株主の残余財産分配請求権は清算時に発動するものです)。

そこで、株式譲渡などが生じた際にも「清算」されたものと契約上みなし、株主が受け取る対価を残余財産として擬制して、投資家の優先的な財産分配を実現するための規定が、このみなし清算条項となります。

 

同時売却請求権とは

ドラッグ・アロング・ライト(Drag Along Right)または売却請求権、買収参加請求権などとも呼ばれる権利です。
多数の投資家の賛成等任意に設定した一定の条件を満たした場合、発案した株主に限らず他のすべての株主に対しても、買収に応じるべきことを請求することのできる権利です。

この権利発動のトリガーである行使要件次第では、最多持株数を誇る投資家が独断で行使できる場合もあるため、会社・創業者株主にとっては非常にインパクトの大きい権利となります。

起業家においては、ドラッグ・アロング・ライトが契約書に規定されている場合、行使要件を中心に、弁護士など専門家を交えて十分な検討をすべきでしょう。

 

ベンチャー投資に関する契約構造の歴史的変遷

経済産業省が平成30年3月に発表した「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」によれば、投資契約にかかる契約構造は以下のような歴史的変遷をたどってきました。

第一形態:投資契約初期

投資契約が利用され始めた頃は、発行会社が投資家ごとにそれぞれ異なる内容の投資契約を結んでいました。種類株式や投資契約などにかかる事務手続きをエンジェルなどの個人投資家が行うのはさまざまなコストがかかるため、投資契約などを締結せず普通株式の形で投資をしているケースも多く見られます。

 

第二形態:投資後項目の切り離し

投資家が増えてくると、株主間で投資後の取り決め内容を統一したほうが各投資契約内容に矛盾が生じなくなります。投資を受けるベンチャー企業側や既存の株主にとっても契約内容がわかりやすく、また契約内容の履行もしやすくなります。そこで、投資後に関する事項を切り離し、株主間契約が締結されるようになったのが、この第二段階です。

 

第三形態:Exit方法の多様化

種類株式が普及した後、個人株主にも優先分配の有効性を高めるためにExitに関する契約を締結する必要性が高まりました。それは、Exit方法としてのM&Aが増えてきたことが背景にあります。今まではベンチャー投資のExitといえばIPOでしたが、M&Aを用いられることも増えてきたため、M&Aを想定して意思決定プロセスや売却代金の分配方法も加味した投資契約が必要になったのです。

 

 

【参考文献】経済産業省「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180402006/20180402006-1.pdf

 

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