契約書ドラフト・レビューの基礎基本(第1回)

このコーナーについて

「契約書ドラフト・レビューの基礎基本」のコーナーは、新人法務担当者が契約書業務の思考回路や発想を学ぶ場を設置する趣旨のものです。意外と体系的に契約書のドラフトやレビューを学ぶ場がないことから、今回、つくってみました。印紙の貼り付けや製本といった事務処理的な話よりも内容的な話を充実させていきたいと思います。

契約書とは?

契約書は合意があったことの証拠となる書面です(民訴法219条、247条参照)。「契約書」という形式は類型的に信用性が高いと考えられていることから、契約書が本人の意思に基づいて作成されていれば、基本的には直ちにその契約の存在が認定されます(民訴法228条1項参照。Ⅰ型事実認定)。たとえば、手元に締結した売買契約書があれば、売買契約の存在は簡単に認められます。電子メールやチャットのやりとりでも契約は成立しえますが、契約書があると取引としては、より安全だといえます。最近ではクラウド上で契約を締結する方式も広がってきました(Ⅲ・Ⅳ型事実認定)

契約書が証拠であることから、契約書の読み手は、第一次的には裁判所です。この点で、取引の当事者は第二次的な読み手ということになります。合意内容を明確にするという意味で契約書は取引ないしビジネスの「行為規範」としても機能しますが、裁判所が読むものという意味で「裁判規範」としての性格が基本となります。しばしば契約書をわかりやすく書けないかという問題意識を持たれることもありますが、裁判所が厳密に読むことを度外視してわかりやすく書くことは困難だというべきでしょう。この場合には、契約書とは別に、契約の内容を説明するものを用意すべきことになります。

このように、契約書は証拠となるものであり裁判所が読むものですから、契約書を書くときは、どうしても法的な意味を厳密に考慮せざるを得ないのです。

契約書記載の実践的ルール

上述のように契約書は裁判所が読むものですから、契約書は、次の3つのルールに従って記述することになります。

  1. 「誰でもわかる日本語」又は「法律用語」で書くこと。
  2. 法律効果を生じさせるものを書くこと。
  3. 要件と効果を MECE で原則例外図式で書くこと。

「誰でもわかる日本語」又は「法律用語」で書くこと。

契約書は「誰でもわかる日本語」か「法律用語」で書きましょう。業界用語やジャーゴン、造語のような「誰でもわからない日本語で非法律用語」は裁判所が理解できません(民訴法179条後段参照)。別に専門用語を用いても裁判手続上は最終的に立証できさえすれば問題はないのですが、専門家証人を招いたりですとか(民訴法190条参照)、専門委員に入ってもらったりですとか(民訴法92条の2参照)、全体の金銭的・時間的コストが膨らむだけなので、契約書記載の段階から余計な手間をかけない工夫が必要です。

法律効果を生じさせるものを書くこと。

契約書には法律効果を生じさせるものを書きましょう。つまり、最終的には強制執行=国家による強制によってでも実現したいものを書くということです(民執法22条等参照)。合意した事項や決まった事項、ルールのようなものを何でもかんでも書けばよいわけではありません。たとえば、業務委託契約書などで機器の操作マニュアルのようなものが契約条項として入っていることがありますが、よほどのことがない限り、そこまで具体的なルールを契約条項として入れる必要はないと考えられます。

要件と効果を MECE で原則例外図式で書くこと。

契約書では、要件と効果を MECE原則例外図式で書きましょう。本当に本当にこれができていない契約書が多いです。たとえば、「●●した場合」について記載したら、「●●しなかった場合」について漏れなく書きましょう。「●●のときは、Aとする。」と書いたら、そのただし書では「ただし、●●のときは、非Aとする。」などと反対の帰結を書きましょう。別の要素の話をするのであれば、項や条を改めましょう。

参照情報

  • 関連法律:民事訴訟法など。

(平塚)

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