業務委託契約書のいろは ~それぞれの文言がなぜ必要なのかを理解しよう~

副業やフリーランスとして独立する人にとって、業務委託契約書の内容は、業務を行うにあたって、今後のクライアントとの関係を規律する重要なものです。会社勤めであれば会社の担当者が契約をしてくれますが、個人事業主として独立する場合は自分で契約内容を精査して契約を取り交わさなければなりません。

そこで、本記事では業務委託契約書によく記載されている文言について、それらの文言がなぜ必要なのか、受託者側としてどのような文言であれば望ましいのかについて考えていきましょう。

 

業務委託契約書によくみられる文言とその目的や役割とは

「委託内容」について

業務委託契約書の中で、どのような業務を行うのかについて明確に定めておきます。業務内容や成果物が明らかでなければ、クライアント側からの発注内容が「何でもあり」という状態になってしまうからです。フリーランスや個人事業主にとっては、できる限り明確かつ具体的に委託内容を設定することが望ましいでしょう。

 

「検収(検査)」の設定は忘れずに。

受託者により納品された成果物をクライアントが検査する期限を定めます。検収の期限の定めがなければ、いつまでたっても納品扱いにならず、報酬の請求ができなくなってしまうからです。

受託者からすれば、検収完了までの日にちはできるだけ短い日数に設定するのが良いでしょう。さらに、定められた検収期間が経過した場合には、検収完了とみなす旨を規定しておくと、クライアントが検収せずに放置していた場合でも報酬請求をすることができるのでおすすめです。

「再委託の制限」とは

第三者への業務の再委託については、基本的にクライアント側の合意がない限り制限されていることが大半です。これは、クライアントが受託者の能力を見込んで業務を委託しているのであり、全く別の第三者が関与することは想定していないからです。

しかし、受託者側にとって第三者に委託するほうが効率よく業務を進められる場合に備えて、「書面に
よる合意があれば再委託が可能」という内容を入れておくとよいでしょう。

 

「委託料」とは

委託業務の対価や支払時期を明確にします。この規定がなければ、受託者側はいつ頃にどのくらいの収入があるかどうかわからなくなりますし、クライアント側が不当に報酬を減額したり支払時期を延ばしたりするおそれもあります。

一般的には、「月末締め翌月末払い」とするのが基本です。なお、下請法が適用される取引にもかかわらず、支払時期が納品(検収が完了したかどうかを問いません。)から60日を超えた日に設定されている場合
には、クライアントが下請法に違反することとなりますので、適切な契約交渉を行うためにも覚えておくことをおすすめします。

 

「著作権」などの知的財産権の帰属はどうすればいい?

業務委託契約では、業務の遂行中または業務遂行の結果として成果物が生み出されることがあります。後々トラブル発生を防止するために、あらかじめ知的財産権の帰属について明らかにしておくことが必要です。

フリーランスや個人事業主にとって、知的財産権が自分に帰属することが望ましい場合もあります。その場合はクライアント側にも成果物の使用を認める必要が出てくるかもしれません。このように成果物の使用を認める際には、どのような目的で成果物を使用することを許すかなど、使用許諾の範囲を明確に定めておくとよいでしょう。

 

「契約解除」の設定について

相手方の信用状態が危うい状態になったときには、一刻も早く契約解除ができるようにしておくことが大切です。民法上では、契約を解除するには相当の期間を定めて催告することと、相手が債務を履行しないことが求められます。

しかし、損害の拡大を防ぐためにも、契約書の中では、相手方が一定の事由に該当する場合には、催告なしに契約解除できる旨定めておくことが望ましいと言えます。

 

「損害賠償」について

契約解除と併せて規定されるのが、損害賠償に関する条項です。契約当事者のどちらか一方が相手方の名誉を損ねてしまったり、相手方の取引関係に影響を及ぼすようなことをしてしまったりした場合に備えて規定します。受託する側としては、損害賠償を請求される側に立つことが多いため、上限金額を設けてできる限り低い金額に設定するほうがよいでしょう。

ただし、損害賠償金額に上限が設けられていたとしても、故意または重過失があった場合等一定の場合については、上限が適用されないこともある点については留意しておくことが必要です。

「契約期間」

一定期間継続する契約ではどれくらいの期間契約が継続するのか、単発契約では終了時期がいつになるのかを明示するためにあります。契約期間の定めがなければ、受託者はいつまで契約に拘束されるかわからず自由な経済活動が阻害される可能性もあります。受託者側にとっては、継続契約でも単発契約でも契約の開始時期と終了時期を明確に定めたうえで、「双方から書面で契約を解除する旨の通知がない限り自動的に契約が更新される」としておくとよいでしょう。

 

「裁判管轄」もよく見よう

業務委託契約書では紛争が生じて法的手段を取るときに、提訴する裁判所について定めることが通例となっています。クライアントと契約を結ぶときは、自分が訴訟を提起する場合と相手方が訴訟を提起する場合のいずれでも負担ができるだけ少ない裁判所を選ぶことがポイントです。

一般的には、自分の住所地等を管轄する地方裁判所とすることをおすすめします。また、別途民事訴訟による法定の管轄裁判所に訴訟を提起されることを防ぐために、単に管轄に合意するのではなく、特定の裁判所のみを管轄裁判所と定める「専属的合意管轄」を規定しておきましょう。

 

契約書のリスク判定サービス「AI-CON」で個人事業主もリスク管理を

業務委託契約書の内容は難しく書かれているので、独立したての頃はどこをどう見ればよいのかわからないこともあるでしょう。

その場合は、AI-CONのようなオンラインで契約のリスクを判定してくれるツールを使用するのもひとつの手です。不利な契約を結ばされることのないよう、契約書の文言は面倒でもひとつひとつ丁寧に読み込むようにしましょう。