【解説】支払条項(取引対価の支払方法を定める旨の条項)

第○条(代金及び支払方法)
甲は、乙に対し、●●の対価として、第●条に定める金員を支払う。
2 乙は●●分につき月末に締め切った上で集計して請求書を発行し、甲は請求月の翌月末日までに乙が別途指定する銀行預金口座に振り込む方法により支払う。
3 振込手数料は甲の負担とする。

要件および効果の概要

特になし。

この契約条項の趣旨

この契約条項は、取引の対価となる金員の支払方法を明確にしてトラブルを未然に防止するための条項です。どのような契約書にも入っている一般的な条項です。基本的には、(a) 対価関係を定める部分、(b) 支払方法を定める部分、(c) 振込手数料の負担を定める部分の3つから構成されます。取引の核となる金銭のやり取りを規律する条項であり、特に対価の支払いを受ける側にとっては極めて重要性の高い条項となります。

条項設計の考え方

前述のように、対価の支払いを定める旨の条項は、大まかに次の3つの部分で構成されます。

  1. 対価関係を定める部分。
  2. 支払方法を定める部分。
  3. 振込手数料の負担を定める部分。

対価関係を定める部分

支払条項の中核となる金員の給付を定める部分です。「甲は、乙に対し、●●の対価として、第●条に定める金員を支払う。」などと何の対価であるのかを明示して記載します。この部分が欠落していると、そもそも契約書として機能しないことがありうるので注意が必要です。たとえば、売買契約では代金支払約束(代金額または代金額の算定方法)が必須の要素ですが(民法555条参照)、これが抜け落ちていると売買契約の成立自体が認められないものと考えられます。また、別紙や別表で金額を定めてこれを契約条項で参照する場合や、取引基本契約のように別段の合意や個別契約などで金額を定める場合はありますが、安易に「甲及び乙は別途協議に基づき金額を定める。」など記載することは支払いを受ける側にとって極めて危険であるといえます。仮に協議で合意に達しなければ、最悪の場合、支払いを受けられないかもしれません。

金額の部分については、付随的に税金の扱いが問題となります。特に何の付記もない場合には、消費税及び地方消費税は原則として料金に含まれます(なお、消費税法63条参照)。料金本体+税金部分で金額が構成されるわけではありません。もっとも、余計なトラブルを避けるためには、税込かどうかを明記しておくほうがよいと考えられます。たとえば、具体的な金額を記載する際には、「甲は、乙に対し、●●円(税込)を支払う。」などと消費税及び地方消費税の扱いを括弧書きで明記しておくことになります。「甲は、乙に対し、●●円(消費税込み)を支払う。」などと書くと地方消費税の取扱いが留保されるとも読めるので、このような書き方は避けたほうが無難です。契約条項は詳しく書きすぎると逆に抜け漏れの温床になります。

支払方法を定める部分

法律上の原則では、金銭債権の場合にはその債権者の現在の住所において現実に現金を引き渡すことが必要です(民法484条、商法516条1項)。もちろん、このようは方法は面倒ですので、契約条項中には、「乙が別途指定する銀行預金口座に振り込む方法により支払う。」などと記載しておくことになります。

また、法律上の原則では、支払請求権が発生した都度、その合意した期限までに料金を支払うことになります。もっとも、取引が多数回にわたるような場合には、月末に締めてその翌月末日に支払うなどの措置が講じられます。振込支払いが前提である場合、特に何の記載もなければ、「翌月末日」とは、事実上、「翌月末日(当日が銀行休業日であれば前銀行営業日)」になります。これを回避したいときは、契約条項中に「翌月末日(当日が銀行休業日であれば翌銀行営業日)」と括弧書きで記載しておきましょう。

cf.期限の利益喪失条項

振込手数料の負担を定める部分

支払債務の履行に係る費用はその債務者の負担ですから(民法485条本文)、振込手数料の負担は債務者が負うのが原則です。これは任意規定ですから、両当事者の合意により振込手数料の負担を債権者に移転させることもできなくはありません。もっとも、基本的には、振込手数料は対価を支払う者が負担するほうが望ましいといえます。なぜならば、振込手数料分につき支払いを受ける側に負担を課したところで、支払う側としては、その計算の手間が余計にかかってしまうからです。そのような手間をかけるくらいならば、少額の振込手数料を負担したほうが経済合理的であるケースがほとんどだといえます。したがって、振込手数料は、その記載があるか、対価を支払う側の負担になっているかといった点だけを確認すればよいといえます。無理に支払いを受ける側の負担にしないようにしましょう。

留意事項

業務委託契約の場合には下請法による規制がかかることがありますので注意が必要です。下請法による規制については、別途頁を改めて解説いたします。

レビューにおけるポイント

第○条(代金及び支払方法)
甲は、乙に対し、●●の対価として、第●条に定める金員を支払う。
2 乙は●●分につき月末に締め切った上で集計して請求書を発行し、甲は請求月の翌月末日までに乙が別途指定する銀行預金口座に振り込む方法により支払う。
3 振込手数料は甲の負担とする。

  • (対象)何の対価か明示されているか。
  • (計算方法・期限)締日と支払日がいつか明確になっているか。
  • (公平性)振込手数料の負担は支払う側の負担とされているか。

参照情報

  • 関連条文:民法484条、485条など。

(平塚)

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